YouTubeとAdam Wが語る、クリエイターマーケティングで「信頼」が最重要指標になる理由
25人の上級マーケターが参加した非公開セッションでは、クリエイター施策の成否を測るうえで、単なる表示回数や広告換算ではなく、視聴者との信頼関係を中心に置く必要が語られた。YouTubeの調査では、視聴者の78%が商品推奨で最も信頼する存在としてYouTubeクリエイターを挙げており、この信頼がAI検索でクリエイターコンテンツが目立つ背景にもつながっているとされた。

Later(SNS運用とインフルエンサーマーケティング支援を手がける企業)は、ロサンゼルスで開いた招待制イベントで、クリエイター施策における信頼、視聴数、コミュニティ、AI検索について議論した。登壇したのは、2,100万人超のフォロワーを持つクリエイターのAdam Wと、YouTubeでクリエイター経済圏を担当するAndrew Peterson。クリエイター経済を壊れやすい生態系として捉え、ブランドがどのように関係を築くべきかが主な論点となった。
壊れやすいクリエイター経済圏をどう扱うか
イベントは、Laterの最高経営責任者Scott Suttonが司会を務めた「Made You Look Tour」の初回として、ロサンゼルス中心部のSoho Houseで開かれた。参加者は上級マーケティング担当者25人に限られ、録画も残さない形式だった。
Scott Suttonは、クリエイター経済を「コミュニティ」であり「生態系」だと位置づけた。クリエイター、ブランド、プラットフォームのそれぞれが収益や事業を築く一方で、まだ若く相互依存の強い領域でもあるため、一方的に価値を取り出すのではなく、関係者が同じ場で方向性を考える必要があるとした。
形式ではなく、視聴者への価値を起点にする
YouTubeのAndrew Petersonは、YouTubeが業界の変化の中で重視してきた問いを「視聴者、クリエイター、広告主にとって、今も最も価値ある場所であるか」と説明した。この考え方が、有料プラン、ポッドキャスト、コネクテッドテレビ、オンデマンド動画、短尺動画のShortsへの展開につながったという。
Shortsは現在、1日あたり2,000億回の視聴を記録している。Andrew Petersonは、価値を軸にすれば、過去のYouTubeの姿や特定の動画形式に縛られずに展開できると語った。ブランドにとっても、先に形式を決めるのではなく、視聴者に提供する価値を定め、その後に表現形式を選ぶことが重要だと整理された。
視聴数は広告表示ではなく、人の集まりとして見る
Andrew Petersonは、マーケターが規模感を見誤りやすい点にも触れた。初めて投稿したクリエイターが180回の視聴を失敗と捉えることがある一方で、実際に180人が集まる部屋を想像すれば、それは小さな人数ではないと指摘した。
Adam Wの動画で2,000万回視聴が出た場合、それは米国オレゴン州の人口規模に近い人数に相当するとも説明された。Scott Suttonは、クリエイターの1視聴をディスプレイ広告の1表示と同じ単位で扱う測定方法に疑問を示した。クリエイターコンテンツの視聴は、広告に遮られた消費者の反応ではなく、好きな相手から興味ある情報を受け取る体験だという見方が示された。
フォロワーとコミュニティは同じではない
Adam Wは、InstagramやTikTokでは受動的に流し見するフォロワーが生まれやすい一方、YouTubeではより強いコミュニティが形成されると話した。動画の背景にある細部に気づくような視聴者は、単に投稿を見かける人ではなく、クリエイター本人に関心を持って集まっている。
この違いは、ブランド施策の成果にも影響する。クリエイターに深く関心を持つコミュニティは、そのクリエイターが商品を紹介したときにクリックや購入へ進みやすいとAdam Wは述べた。さらに、成長には質と量の両方が必要であり、価値あるコンテンツを継続的に出すことが信頼の蓄積につながるとした。
ブランドはクリエイターの世界に入る選択肢もある
Adam Wは、ブランド案件では商品そのものから話し始めるのではなく、まず商品にまつわる共感しやすい緊張や笑いの種を探すと説明した。Old Spice(男性向けデオドラントなどを展開するパーソナルケアブランド)との動画では、汗やにおいという身近な状況を先に描き、最後にブランドを解決役として登場させた。この動画は、広告費による押し上げなしでYouTube上で2億5,500万回視聴されたという。
Andrew Petersonは、ブランドがクリエイターを自社の世界に呼び込むのか、それともブランド側がクリエイターの世界に入るのかを明確に決めるべきだと述べた。どちらが優れているという話ではなく、選択によって実行方法が大きく変わる。後者では、ブランドチームがメッセージを完全に管理できない不安も生じるが、クリエイターの文脈に合った成果を生みやすいとされた。
AI検索の話題では、LLM(大規模言語モデル:大量のテキストを学習し、質問への回答などを生成するAI技術)への対応も議論された。Andrew Petersonは、アルゴリズムを逆算するよりも、視聴者にとって価値あるコンテンツを作ることが重要だと話した。YouTubeの調査では、視聴者の78%が商品推奨でYouTubeクリエイターを最も信頼しており、この信頼がAI検索結果でクリエイターコンテンツが目立つ理由の一部だと説明された。
What this means
クリエイターマーケティングの中心にあるのは、視聴数そのものではなく、クリエイターと視聴者の間にある信頼だと整理された。ブランドは形式や広告換算に先に寄せるのではなく、視聴者にとっての価値、コミュニティの濃さ、クリエイターの文脈に合う表現を重視する必要がある。AI検索でも、信頼される第三者の声が重要な要素として扱われている。